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Vol.4 自信を持って知人にお薦めできる希少な宿
2009/11/20
熊本県・山鹿温泉 旅館寿三
最初に訪れたのは、今から7年前。旅館に泊まって、斜向かいの寿司屋さんでにぎり寿司をお好みで食べ放題の夕食、と朝食付きで1万円、という当時では考えられない企画の取材だった。その背景には、「旅館がお客さんを囲い込んだら、町に活気がなくなるんです。・・」と3代目の館主・松岡靖人さんの町に対する思いがあった。以来、私はこちらの一ファンである。
さて、その旅館「寿三」。玄関前の打ち水は当然だが、館内も客室もとにかく、整理整頓が徹底されているのを感じる。何度か暖簾をくぐったが、今まで一度も雑然さを感じたことがない。しかも、どのスタッフも、私の友人?と感じさせてくれるほど、にこやかに応対してくれる。施設自体は決して新しくはないのだが、いやいや、なんとも気持ちがいい。「料理も自信ありますが、うちはスタッフが自慢なんです」と言い切る館主の言葉に誇張はない。
今回は、寿司じゃなく、通常の1泊2食の料理を味わってきた。先付からデザートまでの12品中、特筆すべき一つは、馬刺しの盛り合せ。赤身と霜降がボリューミーに盛られ、馬肉ならではの、さっぱりとした脂の旨味が味わえる霜降り肉はもちろん、言うことなし。しかし、期待値の低かった赤身の方が、肉本来の旨味と繊維質の舌ざわりや歯ごたえなど、とにかく旨い。馬肉の流通の性質上、これは福岡ではまず出会えない、本場ならではの味である。ほかには、熊本和牛の霜降りステーキ。齢47ともなるとはっきり言って肉より魚派。その私がじっくりとだがペロリと平らげた。焼きすぎに注意しながら、綺麗な肉の4辺をさっと陶板で焼き、旨味を閉じ込め、半生で口の中に放り込む。肉汁が溢れだし、口内に広がり、とっても幸せな気持ちになっていく。
pH9.6という名湯をかけ流している温泉を紹介する間もないのが残念だが、接客、料理、温泉の質、はっきり言って、この料金帯でこれだけの満足感を得られるのは稀である。
熊本県・山鹿温泉 旅館寿三
[所在地]熊本県山鹿市山鹿1645
[電話]0968-44-6121
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