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何時まで続く仏像ブーム 若者世代が火付け役

2009/07/31

仏像に対する関心が何故こうも高まりを見せているのであろうか。
九州国立博物館で開かれた、聖地チベット「ポタラ宮と天空の至宝」展(4/11~6/14)では最終日の14日(日)には7千人を超える入場者があり、会場内はチベット密教特有の異様な雰囲気と人いきれでごった返した。
 同じ時期、東京国立博物館で開かれた奈良興福寺の「阿修羅展」には何と期間中94万人、1日平均1万5千人が訪れたという。
 この人気の秘密がどこにあるのか、九州の会場で、このところ特に目立つ若者たちにインタビューすると、やはりほとんどが仏像への関心を示した。


 私は学者でも心理学の専門家でもないので、ここから先の若者の仏像ブームの深層心理は解析できないが、現場で若者に聞く限り「何故仏像なのか」と言う質問には、残念ながら明確な理由は聞きだせず「何となく」とか「見てみたかった」といった曖昧な反応が多かった。
 景気や雇用や環境といった不安定な社会現象が根底にあるのか、それともいつの時にも見られる若者特有の"風を読む"しなやかさがブームを生み出しているのか定かではない。
 ただ言えることは、出品作品が秘宝でありめったにお目にかかれないことや、仏像本来の使命でもある人の心を癒す魅力を備えマスコミがそれを煽るという相乗効果の結果とも言える。


  それにしてもこの仏像ブームは博物館での展覧会だけの現象ではなく、雑誌「サライ」や若い男性用雑誌「ブルータス」などの出版物も仏像特集をすると売れ行きが一気に急増するそうで今では出版界のドル箱となっている。
 日本の文化財は各地のお寺に保存されているものも多く、その意味では「仏像」がらみの展覧会や出版には事欠かない。
 東京で爆発的人気を博した興福寺創建1300年記念の「阿修羅展」は、この7月14日(火)から九州国立博物館に巡回して開催されるが、前評判はすこぶる好評で成功は間違いないものと見られる。


 しかしその一方で大衆受けする目玉に欠けた仏像展はやはり人気も今一つで、例え仏像ブームとはいえ出品作品の優劣によりけりである。
 九州国立博物館では7月の「阿修羅展」に続き来春には「妙心寺展」を予定しているが、果たして柳の下にどじょうがそれ程たくさんいるかどうか、仏教文化に少々食傷気味のところもありブームとは永遠のものでないことも歴史が示している。
 ブームに便乗するのは世の常であるが、やはり地に足の着いた確かな文化を確かな目で伝えていくことも忘れてはならない大事なことである。


 


■ジャーナリスト 廣﨑靖邦(ひろさきやすくに)